| 「おかあさん。おかあさん。オレ、テレビに出るよ。It's so COOL!」
アメリカの公立小学校に通う5年生の息子は、興奮すると最近、会話に英語が混じってしまう。彼が、授業後プログラム「ブロードキャスティング」に申し込んだことを話してくれたのはひと月ほど前のことだった。 聞くところによると、この「プロードキャスティング」というのは子供たちが学校生活の中でみつけたネタを自分たちで取材し、ニュース番組を制作。 ニュースキャスターも子供たちで、毎週金曜日には校内でテレビ放送をするという、学校内放送局のことだ。 5歳から9才までを南国サモアでテレビを見ることもなく暮らした息子にとっては「テレビに出られる」ということがとても魅力的に思えたようだ。 「ネタ」「取材」「ニュースをつくる」という言葉から「これは手ごわいコースを選択してしまった」という親の心配をよそに、本人は「テレビに出る」ことしかアタマにない。単細胞な息子だ。 |
その単細胞もいざやってみて、やっと表の華やかな部分に到達するまでがかなり大変だということに気付いたらしいが、「今日、フィルミングだったよ。テレビのオレがニュースを読んでいる姿に自分で吹き出しちゃった」などと言って帰ってくる様子を見ると、この頃は少し慣れてきたようだ。 もしこのまま興味が続けば、地元のハイスクールには「ラジオプロダクション」「テレビプロダクション」などの番組制作の勉強をする選択科目が用意されている。 我が家の住むここミシガン州の小さな町の公立学校にはピーク「PEAK」(Partners Empowering All Kidsの略)と呼ばれる地域学習センターが主催する授業後のプログラムが整っている。「ブロードキャスティング」もこのピークのひとつで、地元の州立大学の学生たちやボランティアをうまく利用して運営されている。 PEAK参加希望者は授業後そのまま学校に残る。まずは小腹の減った子供たちのために、ジュースやフルーツ、クラッカーなどのスナックが出される。そしてボランティアの大学生たちにその日に出された宿題の面倒を見てもらう。 それが終わると、それぞれ希望の活動をするというものだ。 昨年から今までに息子が参加したピークは「サッカー」「バスケット」などのスポーツ。 高校でスペイン語を選択している兄たちに刺激をうけて「スペイン語」にも挑戦した。 「アート アンド クラフト」では鉢カバーや、ハロウィーン用のカボチャの飾りを作ってきた。「シェイク アンド ベイク」という簡単クッキングのコースでは、ハンバーガーの恰好をしたクッキーや、小さなピザを持ち帰り自慢した。 このピーク、親としてありがたいのは、全て無料ということだ。宿題をみてもらい、スナックまで出され、週に月曜から金曜まで好きなだけ参加できるうえ、PEAK参加後もスクールバスが利用できるので、迎えの心配も不要。 塾やお稽古ごとにべら棒なお金がかかるのが当たり前の日本人としては、有り難いを通り越して、申しわけない気さえする。 |