| 2月に入ってまもなく、小学5年生の末っ子が保護者あての手紙を持ち帰った。2月14日の金曜日に催されるバレンタイン・パーティーに、保護者にも協力をお願いしたいという下記のような内容だった。
(1)パーティーのための買い物や準備と当日のお手伝いをします。 アメリカの学校では、クリスマス、ハロウィーンなど季節ごとによくクラスパーティーをする。そのたびに保護者に協力を呼びかけ、パーティーの食べ物や準備は、できる人がボランティアで引き受ける。 |
今回、比較的時間のある私は、(1)のお手伝いを買って出た。さっそく担任の先生の指示を受け、他にもお手伝いを希望したお母さんといっしょに買い出しに行った。限られた予算内で、できるだけバレンタインデーの雰囲気を盛り上げ、子供たちが喜ぶようにと、あちこちの店を駈け回った。
ペーパーナプキンは割高でもハート柄のものに、カップは真っ赤に、お菓子を持ちかえるための紙バッグは紫色。チーズを刺す爪楊枝までカラフルな色付きでキメた。 いよいよ当日。各家庭からは、この日のために作られた自家製ハート型クッキー、トッピングいっぱいのアイスクリーム、愛情込めてデコレーションされたカップケーキなどが、どんどん持ち寄られた。私は、集まったお菓子を並べたり、ゲームの準備をしたりとパーティーの雑用を楽しんだ。 日本にいた頃PTAの役員に任命されてしまった時は「なぜ私がこんなことを……」とその会合や数々の仕事が苦痛だったのを思い出した。でも、アメリカに来て、やらなくても済む役に、自分から手を挙げていることに苦笑する。 「○○をして下さい」という押しつけ風な日本流に対して、アメリカ流は「あなたは子どもたちのために何ができますか?」という呼びかけ調。 「よっしゃ、やってあげようじゃないの」と、こちらの「主体性」がくすぐられる。私もいつの間にかアメリカの罠にすっかりはまっているらしい。 一方、10歳の息子は、パーティーで余興を買って出た。当日はエレキギターとアンプを持参。イスとりゲームのBGMは息子が担当。その後チャックベリーの『ジョニービーグッド』とエリック・クラプトンの『ホワイトルーム』を弾き語りした。 子供たちは体をゆすり、手拍子をうち、"Go! Go! Go, Johnny, go! Go!"と大合唱。担任の先生は思いがけない懐かしの曲に踊りだした。すっかり盛り上がったところで、隣のクラスの先生が現れた。 「今度、彼をうちのパーティーにも貸してくれる?」 「いいわよ。今回のパーティーはこの子のおかげで盛り上がったワ!」 ほんとに楽しいパーティーになったが、アメリカで暮らすようになり、息子は「目立つ」ことを躊躇しない人に変化している気がする。 |