7 『ハイスクール』VS『高校』ちがいあれこれ


ハイスクール

我が家の子どもたちが通うハイスクール。
昨年改築工事が終わりミシガンの中でも
屈指の設備を誇るそうだ。
 現在、我が家の子ども4人のうち3人が、アメリカ・ミシガン州の公立のハイスクールに通っている。長女が12年生、長男が10年生、次男が9年生だ。

 アメリカの義務教育は1年生から12年生までだが、地域によって小学校、中学校に通う年数が違う。私たちが住む地域は、1年生から4年生までの小学校、5・6年生用の小学校、7・8年生の通う中学校と分かれている。そして9年生から12年生の4年間がハイスクールということになる。

 我が家はミシガン州に移り住む前に、日本からサモアに移住した。1997年のことだった。 日本では長女が中学1年生、長男が小学4年生、次男が小学3年生、そして、末っ子は5歳で就学前だった。今思えば、突然サモアで現地校に通わされた我が家の子どもたちにはかなりの試練だったかもしれない。

 サモアは独立国で、サモア人同士の会話はサモア語だが、公用語は英語と定められている。学校では全校集会はサモア語だが、授業はニュージーランドのカリキュラムを手本に英語で行われる。 移住当初の子どもたちにとって、どちらもチンプンカンプンなことには変わりない。

しかし、子どもの順応力はすごい。山あり谷ありだったが、徐々に言葉の壁は克服できた。そして英語を使い始めて6年経った今では、4人ともオーナースチューデント(全ての教科がB+以上の成績優秀者をこう呼ぶ)として何のトラブルもなく、アメリカのスクールライフを楽しんでいる。

 アメリカの「ハイスクール」と、日本の「高校」とのいちばんの違いは時間割が一人一人違うことだ。 必須課目はもちろんあるが、多彩な選択科目の中から個性に応じてそれぞれが思い思いの課目を選択する。そのため授業は一日6時間あるが、まったく同じ時間割を持つ友達はまずいないことになる。 我が家の場合、兄弟いっしょに同じ授業を受けるのはいやだと言って時間割が重ならないように工夫した。とはいうものの、9年生の次男と10年生の長男はそれぞれ別の時限に同じ先生の教える幾何学の授業を受けているので、出される宿題は毎日同じ。兄弟ちゃっかり、宿題を分担したり、わからないところを教えあったりしている。

 どのクラスにも9年生から12年生までが混在しているので、子どもたちの交友関係もおもしろい。例えば、コンピュータークラスで仲のいい長女の友達とスペイン語クラスで仲のいい長男の友達は同一人物だったりする。

 こうして子どもたちそれぞれの友達が学年を越えてけっこうリンクしあっている。「▽▽先生には気をつけた方がいいよ」「○○ってステキな子だね。紹介してよ」なんて会話が家庭内で飛び交っている。 年齢の違う姉兄弟でも毎日共有する体験が多いので学校での出来事を楽しそうに話すようになった。母親の私としてはこんな子どもたちの会話に聞き耳を立てるのが密かな楽しみだ。

 長女は昨日、学校の廊下でクラスメートの男の子と挨拶のハグ(抱擁)をしていたら、後ろから長男に蹴飛ばされたと文句を言った。「見張られているみたいでいゃ〜な感じ」と長女が愚痴をこぼすと、「日本人として恥ずかしい」と長男は訴える。 こんなやりとりも、長女は卒業を来月に控えているのでもうすぐおさらばだ。

 そしてもうひとつ親としてありがたいことは、ハイスクールまでが「義務教育」ということだ。 日本でもし、子ども3人が同時に高校に通っていたらと思うと感謝せずにはいられない。何でも日本で「高校」に通う場合の毎月の教育費は授業料、PTA会費、給食費 、通学費、学用品費 などを含めると公立で毎月2万円弱、私立で5万円弱が平均だという。×3としたら…。 感謝・感謝・感謝である。 ちなみに、アメリカの「ハイスクール」は授業料、教材費、スクールバス全て無料で、PTA会費も制服もなし。 高校に通わせるための費用はゼロである。

(shes netに連載されたものを転載しております)


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