9 ハイスクールグラジュエーション


ハイスクール卒業式

式終了後、青空の下で 名残惜しそうに
集う卒業生や家族
 前回のプロム(学校が主催する卒業前のダンスパーティー)に続き、ハイスクールの卒業関連行事は続く。日本の高校の卒業式にあたるハイスクールグラジュエーションは、アメリカ人にとってはかなり大切な行事であり、子どもから大人への大きなステップでもある。日本とちがい、ハイスクールまでが、義務教育ということもあり、このハイスクールを無事に卒業してこそ、一人前という感がある。

 実際に、成績不良による学科の単位不足や家庭環境の諸問題などから、ハイスクールを卒業できない者も毎年たくさんいるそうだ。ただ、単位不足の場合はなんとも気軽に12年生をもう一度やることになる。その場合、通常の12年生、「シニア」に対して二度目の12年生を「スーパーシニア」と呼ぶそうだが、「落第生」と言わないところがポジティブでアメリカらしい。

 卒業を機に、親元を離れ遠くの大学に進学したり、就職したりするのは日本と変わらない。そのため卒業間近には、たくさんのシニアたちが、「オープンハウス」と呼ばれる小パーティーを催す。このオープンハウスは「今までありがとう」の意味を込めた謝恩会でもあり故郷を後にするためのお別れ会でもある。

 たいていは、簡単なスナックとドリンクを用意して、「○時から○時の間に寄って下さいね」という感じの気軽な集まりだ。卒業シーズンには毎日あちこちのシニアがオープンハウスを開催するので、「今日は○○さんと○○さんのオープンハウスに行ってくるね」とオープンハウスのハシゴということも珍しくない。

 真っ青に晴れ渡った爽やかな日、娘のグラジュエーションには日本から、祖母と叔母も駆けつけてくれた。日本では高校の卒業式ともなると父兄の参加者は減ると言う傾向にあるようだが、アメリカでは、義務教育中、小学校や中学校の卒業式はないため後にも先にもこの式典がとても意義深いものとなる。会場となった地元の州立大学の大きな体育館は卒業生の家族、親戚縁者で見事に埋め尽くされていて驚いた。

 厳粛なムードの中、卒業生の名前を一人ずつ呼び、ディプロマを校長から手渡された。このグラジュエーション独特のキャップとガウンを身にまとった娘の姿を見て、親子関係は永遠だが、「彼女の子育ては終わりかな……」というセンチメンタルな感情がよぎった。式終了後は、いつまでも名残惜しそうに記念撮影をする家族、卒業生が青空の下に溢れていた。

(shes netに連載されたものを転載しております)


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