「サモアで暮らす」 鳩山幹雄

8.子連れで授業の先生も


朝礼で校庭に並ぶ小学校低学年の子供たち
朝礼で校庭に並ぶ小学校低学年の子供たち

 サモアの学校教育は小学校が六年、中学が二年で、その後五年制の高校に進む。たいてい二月に新年度が始まり、十二月に終わる。昨年の二学期途中から首都アピアの学校に通っている長女、長男、次男は、二月にそれぞれ中学二年生、小学六年生、五年生に進級した。

 五歳の末っ子は一年生になった。日本の学校は指定の上履きに指定の帽子、指定の体操服に 指定の水着……と、指定ずくめだが、ここでは用意するのは制服ぐらいのものだ。かばんは自由、足元はゴム草履か裸足でかまわない。

 トイレットペーパーひと巻き(1ターラ=約50円)、サル(サモア流ホウキで5ターラ)、ファラ(サモア風ござで8ターラ)の三点セットを寄付する以外、わずらわしい手続きは一切ない。授業料は小学校の低学年が年間二十ターラ、高学年が三十ターラ、中学生が五十ターラだ。

 子供たちは帰宅すると、あれこれ学校の様子を話す。末っ子は「今日は泣く子がたくさんいたけどオレは泣かなかった」と自慢げに語り、長男は「昼休みの教室のゴミ拾いをしっかりやらなかったから、全員お尻を定規でたたかれた」と笑う。

 次男が「今日は授業がなくて、一日中掃除だった」と付け足す。長女も黙っていない。「数学の先生ったらいつも教室に二歳くらいの子供を連れてくるんだ。それで、よくなついている生徒に子守りをさせながら 授業しちゃうんだから。その子がぐずり始めると、『誰か、何か食べ物あげて』って言うんだ。しょうがないなぁって感じで生徒がスナック菓子を与えると、その子ちゃっかりおとなしくなる。」

 そんな話を耳にしても腹立たしいどころか、ほのぼのとしてしまうのは、やはりここがサモアだからだろう。

 我が子が通う小・中学校は英語を中心に授業をしている。宿題も英語だ。たいした量ではないが、言葉のハンディがあるのでけっこう苦労している。とはいえ、サモア人も母国語に加えて英語をマスターしているのだから我が子にも習得は決して不可能ではない。四人とも異文化の壁に押しつぶされることなく、毎日元気に学校に通っている。

 「そのうち英語もなんとかなるだろう」のサモア流に身を任せることにしよう。


朝日新聞中部地方版より転載
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