４年間暮らしたサモアを引き揚げ、ニュージーランド経由で一時帰国、郷里の愛知県で数週間過ごした後、アメリカ・ミシガン州へと飛び立った。

日本滞在中は毎度のことながらあわただしかった。サモアとの生活ペースの違いに加え、年に１度のチャンスにあれやこれやと、予定のびっしりと詰まった相手の都合にあわせて動かなければならない日々が３〜４週間も続くと正常な精神状態を保つのが難しくなる。 「ただでさえ極悪な人相が日本に戻るといちだんと悪くなる」と、妻に真顔で言われた。確かに、腹立たしく感じることが頻繁にあって、知らず知らずのうちにしかめっ面になっているのかも。精神衛生上好ましくない。

子供たちはサモアを離れる時点ではこの移動計画にやや不満気な様子だったが、ニュージーランド見物をして日本に戻るころにはすっかり旅行気分ではしゃぐように。そして郷里滞在中はほとんど毎日幼馴染みと遊んだり、祖父母に甘やかされたり、新生活に向けての衣服や機内で食べるおやつを買い揃えたり……と、久しぶりの日本を楽しんだ。

５年間押し入れに眠っていた冬物のジャケットや靴下など、６人分の衣類や生活用品を10数個のスーツケースや段ボール箱に詰め込み、名古屋空港を飛び立った。

五大湖のふところミシガン

カリフォルニア、ニューヨーク、フロリダなどと違い、よほどの世界地理好きかアメリカ通でもなければ、アメリカの地図を頭に描いてミシガン州がどのあたりなのかを簡単に想像はできないだろう。

ミシガン州は中西部と呼ばれる地域の北東に位置し、東はエリー湖とヒューロン湖、西はミシガン湖、北はスペリオ湖と、五大湖のうちの四湖に囲まれている。そして東はヒューロン湖を、北はスペリオ湖をはさんでカナダのオンタリオ州に接している。緯度的には北海道とほぼ同じで、真夏は30度を越えるが、10月下旬には初雪が降ることもあり、真冬にはマイナス20度を記録する。 日本人にもよく知られている大都市としては自動車産業の中心地デトロイトがあり、隣州のイリノイ州にはシカゴがある。

ブルーが五大湖、赤がミシガン州	エリー湖の右は何湖？オンタリオ湖です

70年代の頃は、愛知県からミシガンへ向かうには新幹線でまずは東京に出て、羽田からハワイ、ロス、シカゴ……で乗り継がねばならず、丸２日がかりだったが、東京、大阪、名古屋からデトロイトまで直行便が飛ぶ現在は、ほんの10数時間でミシガンのほとんどどの都市にも行けてしまう。そのうえオフシーズンなら運賃も驚くほど安い。いつも６人で移動する我が家にとっては、非常にありがたい。加えて、インターネットの普及、国際電話料金の値下げなどのおかげで、海外に暮らしていてもそれほど不便を感じることがなくなった。本当に世界は狭くなった。