【五大湖のふところミシガンで暮らす】
鳩山 幹雄  

ミシガンの州都ランシン国際空港。こじんまりとした空港は、いつも閑散としている
ミシガンの州都ランシン
国際空港。こじんまりとした
空港は、いつも閑散としている
初日の夕食はレスラトンで豪華に(中央がサンディー)
初日の夕食はレスラトンで
豪華に(中央がサンディー)
クラシックカー・ショーもあちこちで。さすが世界の自動車産業の中心地ミシガン
クラシックカー・ショーもあちこちで。
さすが世界の自動車産業の
中心地ミシガン



第2回 期待に胸を膨らませて新生活を始める


ミシガンは第2の故郷

1970年代中頃、苦学生生活を送ったミシガンには、たくさんというほどではないが今でも頼り甲斐のある友人が数人いる。長年音信不通だった友人とも、2、3年ほど前からEメールによる交友が復活し、昨夏18年ぶりにミシガンを訪ねて再会を果たした。下見などといったつもりはなかったが、旧友に歓待されて柄にもなく感動し、第2の故郷とも言えるミシガンへの郷愁を強く感じた。それが今回の生活拠点移動のひきがねになったようだ。

といっても、妻と4人の子供にとってミシガンは未知の世界。アメリカに対する漠然としたイメージしか浮かばない。実際、子供たちは目的地を知らないまま名古屋空港を飛び立った。行き先がアメリカだろうことは推測できても、最終目的地は知らないままデトロイトで乗り継いでミシガンの州都のランシンに降り立った。

子供たちは、ミシガン→デトロイト→「ロボコップ」という連想で「治安の悪いところだったらどうしよう」という不安も少しはあったようだが、ランシン空港の明るくのんびりとした雰囲気に、多少は不安も解消され、緊張がほぐれたようだ。

初日からトラブル続き

ランシン空港に降り立つと、旧友サンディーが迎えてくれた。「ワ・タ・シ・ハ、サンディー、デ・ス」と、つたない日本語で自己紹介するサンディーの出迎えを受け、「だれか空港に迎えに来てくれるの? 迎えのない空港に降り立つのって、なんだかさびしくて、いやだなあ」といっていた娘の顔にも笑みがこぼれた。

ところが空港到着と同時に早くも一難。なんとスーツケースがひとつ紛失。飛行機で預けた荷物がなくなるという話は珍しくないが、我が家にとっては初めて。 「大丈夫。スーツケースの紛失なんて毎度のことだから。明日にでも見つかるから」と、軽く言うサンディーの言葉を信じ、サンディーの運転する大型ワンボックス車で空港を離れた。

そしてそのわずか1分後、「あっ、ここを曲がるんだった」といって咄嗟にハンドルを切った瞬間、「ガシャン!!」追越し車線をハイスピードで走り抜けようとしていたピックアップ(小型トラック)の荷台後部に接触してしまった。 車を降りるとサンディーは、ピックアップの運転席から降りてきた恰幅のいい中年男性に言った。

「ごめんなさい。悪いのは私のほう」

その男性は凹みを確認すると、

「大したことないから、いいよ」

といって、そのまま走り去った。確かに音の割にはどちらの車も破損はたいしたことはない。さすがアメリカ車は頑丈にできている。それにしても大事にならなくて本当によかった。

「今晩の夕食は私におごらせてね」というサンディーの言葉に甘え、1時間ほどドライブしたのちサンディーの行き付けのレストランで夕食をご馳走になった。子供たちは半端じゃないその量に初日からびっくり仰天。「だからアメリカ人はみんなでかいんだな」と納得。

荷物の紛失に接触事故と、トラブルにも見舞われたが、さわやかな青空、サンディーのフレンドリーな笑顔、そして食べ切れないほどのご馳走に迎えられ、子供たちの第一印象はまずまず。「アメリカは危険な国」という先入観を少しは崩すことができたような気がする。



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