【五大湖のふところミシガンで暮らす】
鳩山 幹雄  

長い冬が終わり、街角にも春の日差しを楽しむ姿が見られるようになった
長い冬が終わり、街角
にも春の日差しを楽しむ
姿が見られるようになった
リスも春の陽気を楽しんでいるよう
リスも春の陽気を楽しん
でいるよう
午後8時を回っても屋外でバスケットボールを楽しむ子どもたち
午後8時を回っても屋外で
バスケットボールを楽しむ
子どもたち



第14回 突然訪れたミシガンの春


それぞれの春

日本に暮らした頃は、3月に入るとカレンダーや日めくり、新聞の天気予報欄などで「啓蟄」「春分」「桜前線」等、春の到来を示す節目を目にするたび、「そろそろ春」と思ったりした。田舎暮らしだったので、身近な自然の変化に春を感じることもよくあった。道路端に頭を出すツクシやフキノトウに春を見つけ、庭先に響くどこかぎこちないウグイスの鳴き声に春を聴き、玄関脇の庭に植えた桜の枝に順にチラホラと開く淡桃色の花弁に春を楽しんだ。

わが家のなかで春の訪れをとくに敏感に察したのは、花粉症の妻と長男。2月の下旬あたりから鼻をムズムズさせて「花粉が飛び出した。いやだなぁ」と愚痴をこぼした。3月に入ると症状は悪化。妻は鼻水が止まらず頭がフラフラするといい、長男は目が痒くて耐えられないと半ば発狂。だからといってどうなるわけでもないのだろうが、花粉の飛び具合が気になるらしく、毎日テレビや新聞の花粉情報に目を落とした。

そんな苦労も1997年の夏にサモアへ越して以来、嘘のように消えた。決して花粉症から逃れるために南国サモアに越したわけではないが、妻も長男もサモアに暮らした4年間、ただの1日も花粉症に悩むことはなかった。

昨年夏からミシガンに暮らすことになって以来、花粉症の再発を危惧する妻と長男の2人には「春」はできれば飛び越えたい季節。といってもどのみちミシガンの春は遅く、そして短い。3月中は完全に冬。なにせ今年は4月に入ってからも雪が舞った。そんな遅い春の到来は妻と長男にとっては朗報。今のところ2人ともミシガンの花粉には反応していない。このまま花粉に悩まされることなく夏を迎えられると良いのだが……。

ワープした1時間

今年のミシガンの春は4月7日にやってきた。気温は相変わらず低いが突然1時間も日が長くなったのだから「春到来」と言ってもかまわないだろう。「デーライト・セービング・タイム」と呼ばれる夏時間が始まったのだ。

毎年4月の第1日曜日の午前2時に時計の針を1時間進ませて3時に訂正する(といっても現実には就寝前に針を合わせる)。つまり突然1時間失うが、そのために日没もその日から1時間遅くなる。これから日はまだまだ長くなり、あと2カ月もすれば午後10時まで屋外でキャッチボールができるほど日は伸びる。平日でも「アフターファイブ」をテニス、ゴルフ、ピクニック等、屋外でのスポーツやレジャーを楽しみとするアメリカ人にとって、終業時間の午後5時以降1時間長く太陽を楽しめることは、意義あることのようだ。

ちなみにこの夏時間は現在約70カ国で導入されている。先進国で採用していないのは日本ぐらい。といってもアメリカ国内でもアリゾナ、インディアナ、ハワイの3州は採用していないという。日本でも昭和23年から昭和27年まで4年間実施されたが定着しなかった。

賛否いろいろあるようだが、わが家の場合、明るいうちは子供たちが屋外で遊び回るので、結局夕食の時間がずれ込み、そして就寝も遅くなってしまう。その結果睡眠時間が減って起床が辛くなる。この悪循環をいかに克服するかがわが家の当面の課題となりそうだ。



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