【五大湖のふところミシガンで暮らす】
鳩山 幹雄  

街角で洗車を呼びかける女子高生
街角で洗車を呼びかける女子高生
とにかくでかくて重いアメリカのスイカを懸命に抱える末っ子
とにかくでかくて重いアメリカの
スイカを懸命に抱える末っ子
きらびやかなネオンで飾られたカーニバル
きらびやかなネオンで
飾られたカーニバル



第20回 花火、スイカ、そして移動カーニバル


さり気なく訪れたミシガンの夏

北国ミシガンに夏がやってきた。といっても暗く湿っぽい梅雨からカッと照りつける真夏の太陽へとガラリと転換する日本とは異なり、ミシガンには「今日から夏」といったはっきりとした変化はない。それに夏といっても北海道とほぼ同緯度にあるうえ湿度も低いミシガンの暑さは、コンクリートの照り返しとエアコンの室外機の吐き出す温風で熱帯夜を作り出す東京のような大都会や、ただ座っているだけでジワッと汗の吹き出す南国サモアと比べるなら大したことはない。ここでは、気候よりもむしろ街の雰囲気や人々の行動の変化に夏の到来を感じる。

学校が年度末を迎えて夏休みに入ると同時に街には朝から子供たちが溢れるようになり、我が家の向いにある高校のグラウンドでは、夕刻になると連日ソフトボールの試合が繰り広げられる。まだまだ高い太陽が降り注ぐなか、甲高いかけ声を発しながら汗して走り回るユニフォーム姿の高校生を、木陰で、持参した折畳椅子にゆったりと腰を下ろして声援を送る親。カキーンと響き渡る金属バット音。クリーンヒットやファインプレーの度に沸き上がる拍手歓声。そののどかな雰囲気に、思わず歩み寄りいっしょに声援を送りたくなってしまう。

スーパーマーケットの駐車場に忽然と出現する「花火大安売り」のテントや手製の「CAR WASH(洗車)」の看板を抱えて交差点でドライバーに呼びかけるタンクトップの女子高校生たちもまた、夏の到来を告げる風物詩。

そして我が家のデザートは、スーパーの店頭に並んだ2ドル99セントの特売スイカ。日本のスイカほど甘くはないが、日本のスイカを3つ並べたほどの楕円の特大サイズは圧巻。夕食後一家でベランダに腰を下ろし、たっぷりと塩を振りかけたスイカを頬張る。大きく傾いた夕日を眺めながら、芝に向かってタネを吹き出した末っ子がボソリと言った。 「来年になったらこのタネからスイカができるかなぁ?」 木陰を抜けて肌をなでるそよ風がことのほか気持ち良かった。

公園に突如絶叫マシンが立ち並んだ

毎年訪れる移動カーニバルもまた夏の名物。市民が散歩やサイクリング、バスケットボールやテニスを楽しむ静かな公園が、突然絶叫マシンや出店、射的、バーなどの立ち並ぶ歓楽の場に変身。その移動カーニバル会場で午後10時から始まる打ち上げ花火がどうしても見たいという娘のリクエストに応えて一家で出かけた。

夜空に広がるカラフルな花火と若干遅れて耳に届くパーン、パーンという破裂音。これもまたなくてはならない夏の風物詩。15分ほど花火を見上げた後、カーニバル会場をぐるりと一周。ジェットコースター、バイキング、バンジージャンプなどから漏れる悲鳴を聞きながら、ホットドッグスタンドなどの出店の並ぶ賑やかな通路を進んだ。

息子たちが興味を示したのは、乗り物よりも射的やバスケットボールなどの、むしろ賞品獲得の可能性のあるゲーム。フリースロー1回2ドルで、見事一発で入れば大きなぬいぐるみが貰えるというバスケットボールをやりたがる次男を、「絶対に無理だから。2ドル捨てるのと同じ」と、妻と2人で説得。その直後4人グループの1人がそのバスケットボールにチャレンジ。予想通り外し2ドル無駄にした青年のおかげで次男は渋々納得。

千鳥足の酔っ払いを避けるようにしながら、きらびやかなネオンで飾られた公園を後にした。



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