運転免許講習を受ける高校生たち | 教習車の車種はいろいろだが、 屋根の上の「DRIVER EDUCATION STUDENT DRIVER」のサインは共通 | わずか4回の実地練習、 つまり4時間車を運転した だけで、長男はこのステッカー 「MY TURN TO LEARN (私が学ぶ番)」を取得。 これを自分の車に張り付けて 助手席に親を座らせれば 堂々と公道を運転できる |
初日から時速80キロで公道を突っ走る
夏休みに入るのと同時に、高校に通う17歳の長女と14歳の長男がいっしょにドライバーズ・エデュケーションと呼ばれる運転免許の講習に通いはじめた。 受講料は以前は無料だったらしいが、現在は1人110ドル。ミシガンでは、14歳9カ月に達していれば、この講習が受けられる。パート1は1日2時間の講習が12回と2時間の実地訓練を6回受け、約3週間で終了する。実地練習は、2人ひと組で、実際に運転するのは毎回1時間。ほかの1時間は後席に座りパートナーの運転から学ぶ。 「明日初めて運転するよ」講習を受け始めて1週間が過ぎた頃、長男が帰宅と同時にやや興奮気味に言った。14歳にして車を運転するのだから、興奮するのも無理はない。といってもほかの生徒はみな多少の経験はあるらしい。講習の初日に記入したアンケートに「今まで車を運転したことはありますか」という質問があり、ほかの生徒はみな「はい」に印をつけていたので驚いたと長女が話したが、個人の敷地内でちょっと車を動かす程度のことは、高校生にもなればみな経験があるのが普通で、講師もその常識を理解したうえでレッスンを行なうようだ。 そういえば、昔このミシガンで学生をしていた頃のこと、10歳にも満たない息子2人それぞれに1台ずつスズキの軽トラックを与えていた弁護士の友人のことを思い出した。2人は、小さいながらも本物の車をまるでゴーカートのように自在に乗り回していた。 「どうだった?」 初めての実地訓練を終えた長男に妻が訪ねた。 「うん。まぁまぁ、かな」 「外も走ったの?」 「走ったよ。ローズブッシュ(隣町)まで時速50マイル(80km/h)で往復したよ」 驚いた妻は言葉も出なかった。いくら田舎道とはいえ、生まれて初めて車を運転する14歳の子どもに初っぱなから公道で時速80キロで走らせてしまうのだから、日本のあの綿密な自動車教習所のレッスンの経験者にとっては無謀極まりない行為に感じられても無理はない。 長女は苦難の連続 「もう、いや。あの先生、大っ嫌い」噂の嫌みな講師に当たってしまったらしい長女は、初回の実地訓練から帰宅すると、うっぷんをぶちまけた。長男とは対照的に、長女は駐車場内で車庫入れの練習を繰り返したという。講師次第でこれほどレッスン内容が異なるのだからおもしろい。 長男は、第2回の実地レッスンでは町中のもっとも交通量の多いメインストリートを走り、レーンチェンジなどを体験。そして第4回には早くも高速道路を制限速度の時速70マイル(約112km/h)で走行。「親が隣に乗っていれば車を運転しても良い」という仮免許をもらった。 そして受講開始から3週間、第12回の講習を終えた2人はそろって筆記試験にチャレンジ。選択問題が百問で合格ラインは80問。2人とも一発で合格。その翌日、実地訓練の終了した長男はセクレタリーオブステートと呼ばれるオフィスへ出向き、親もしくは親が許可した21歳以上の運転免許保持者が助手席に同乗していれば運転しても良いという条件付免許証を発行してもらった。この免許で最低50時間の運転を終え、3日間のパート2の講習を受講し16歳以上に達した時点で路上実地試験をパスして初めてひとりで運転できる正規の免許証取得となる。 極度な方向音痴なうえに運動神経も決して良くはない長女は、4時間余分に実地レッスン受けなければならなかったが、それでもなんとか1週間遅れで同じ条件付き免許証を取得。 パートナーの都合が悪いというので1度長女の実地練習に同乗したが、正直言って恐ろしかった。方向指示器を出さずに右折したり、ミラーを擦りそうになったりで、まさにハラハラドキドキの連続。この先50時間、子どもの運転技術向上のために助手席に座るのが、ここでは責任ある親の義務だとはいえ、そんな寿命の縮む思いを50時間もするのはまっぴらご免。我が家の場合、妻の役割となることはまず間違いない。 |