【五大湖のふところミシガンで暮らす】
鳩山 幹雄  

ジャクジーに浸り、温泉気分の子供たち
ジャクジーに浸り、温泉気分の
子供たち
9月に入ってもまだオツェゴ湖畔は夏模様
9月に入ってもまだオツェゴ湖畔は
夏模様
久しぶりのビーチで砂とたわむれる子供たち
久しぶりのビーチで砂と
たわむれる子供たち



第26回 州立公園でつかのまの湖水浴


週末を知人の別荘で

1カ月ほど前の金曜日の夕刻、古くからの友人より電話があった。 「今、息子のパートナーが所有している別荘に来ているんだけどさ、とってもすてきな所だから、明日暇ならぜひ遊びにおいでよ。おいしいジンもあるし冷蔵庫にはビールも冷えているし、車でほんの数分のところにはきれいなビーチのある州立公園もあるし、明日も明後日も好い天気になるらしいから」

ひとりよりも大勢のほうが楽しく過ごせるだろうと判断した友人の誘いを素直に受け入れ、週末を別荘地で過ごすことにした。夏のあいだ1度も使うことなくしまい込まれいてた水着を押し入れから引っ張り出し、クーラーボックスに食料一式詰めこんで、翌日友人の待つ別荘へと向かった。

常夏のサモアに暮らした4年間は、釣りと海水浴が我が家の娯楽のすべてというほど頻繁にビーチへ通った。それがミシガンに暮らすようになって、せっかくの短い夏のあいだも、そのどちらとも縁遠くなってしまった。これまで屋内プールへは幾度か足を運んだが、ビーチへは昨夏は1度きり、そして今年は今回が初めて。釣りはいまだチャンスのないまま。

昨夏は親類を訪ねて東海岸までドライブ。800マイル(1300キロ)の道程の途中、カナダを抜けてナイヤガラの滝を見学。そしてボストン郊外に暮らす従妹一家とともにニューハンプシャー州へキャンプに出かけ、タイヤの古チューブに座って川を下る「チュービング」を体験。それなりに思い出に残る夏になった。

今年も子供たちの夏休みのあいだにどこかへ出かけたいと思ってはいたのだが、引っ越しでバタついたままどこへも出かけずに夏が過ぎ、9月に入ってしまった。子供たちの新学期も始まり、これで泊まりの外出はおそらく来夏までないだろうと思っていた矢先の電話だったので、突然の誘いながら言葉に甘えて出かけることにした。

ビーチでビールはやっぱりうまい!

高速道路を時速74〜75マイル(約120キロ)で飛ばし2時間弱、友人の待つ別荘へ到着。別荘といってもバンガローのような簡易建物ではなく、2階建ての立派な一戸建て住居。築7年ほどだというが、常在するわけではないので、屋内外ともまるで新築同様。加えて庭にはパターゴルフがありテラスには6人ほどが1度に温まることのできるジャクジー(ジェットバス)、そして広々とした地下室にはビリヤードまで揃っているという豪華仕様。

荷物を下ろし、ひと息ついた後、水着に着替えてすぐ近くの州立公園へ。昨年に比べると今年の9月は非常に暖かく、公園内のオツェゴ湖畔のビーチにはまだまだ水と戯れる姿がけっこうあった。といっても日本の真夏の海水浴場に比べるならまるで貸し切り状態。子供たちは浅瀬を走り回ったり長男を砂に埋めて砂で女体を作ったり……と、まるでサモアでの休日を彷彿させるはしゃぎぶり。 日焼けを恐れる大人3人は木陰のベンチに腰を下ろし、ポテトチップをつまみにビールをグイッと一杯。ビーチで冷えたビールを飲むという贅沢は2年半ぶり。

ミシガンにはこういった州立公園やリクリエーション施設が100以上あり、その大半はキャンプグラウンドも併設しているので、休暇を自然とともに過ごす家族は数多い。使用料も手頃で、ちなみにオツッェゴ公園の場合、日帰り客は車1台4ドル(年間パスは20ドル、シニアの年間パスは5ドル)、キャンプサイト使用料は1泊19ドル、2段ベッドの整ったバンガローは39ドル。

こちらの学校は、小・中学、高校とも、夏休みになればほぼまる3カ月、ただの1日も登校する必要はない。高校3年生といえども受験勉強もまったく不要。2〜3週間連続でキャンプを楽しむ家族も珍しくない。我が家もいつの日かキャンピングカーを手に入れてグランドキャニオンやイエローストーン国立公園などを訪ね、アメリカの醍醐味を家族揃って味わいたいという思いはするものの、日々の暮らしに追われる現在、そんな願いは当分叶いそうにない。それに、末っ子はともかく家族よりも友人との時間を尊ぶ高校生の長女や長男にとっては、家族旅行など子の義務として参加する程度の喜びしかないかもしれない。

子の成長に伴い徐々に変化する家族模様を素直に受けとめるのが、はたして理解ある親の姿なのかもしれないが、できればもう少し家族6人で日々の喜怒哀楽を分かち合いたい。



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