【五大湖のふところミシガンで暮らす】
鳩山 幹雄  

ハンティング用品売り場にズラリと並ぶハンティングウェア。オレンジ色は事故防止に適しているらしい
ハンティング用品売り場に
ズラリと並ぶハンティングウェア。
オレンジ色は事故防止に
適しているらしい
ハンティングが趣味という友人の銃を手にしてポーズをとる子どもたち。でも撃ったことはない
ハンティングが趣味という友人の
銃を手にしてポーズをとる子どもたち。
でも撃ったことはない
射止められたシカの頭は剥製にしてコレクションに加えられる
射止められたシカの頭は剥製にして
コレクションに加えられる



第29回 ディア・ハンティング・シーズン到来


経済活性化の一翼を担うミシガンのシカ

今年も「ディア・ハンティング(シカ狩猟)」の季節がやってきた。ミシガンは北米でもっとも狩猟が盛んな州のひとつで、クマ、シカ、シチメンチョウ、キジ、カラス、アヒル、カモ、ガチョウ、ウサギなど、獲物は時期によって変わるが、ほとんど年中狩猟が許されるハンター天国だ。 なかでも一番の話題は11月のディア・ハンティング。紅葉が終わり枯野と化した自然界を、法律で定められた蛍光オレンジのジャケットに身を包んだにわか猟師たちが、猟銃を片手に獲物を求めてさまよい歩く。オレンジ色は、人間の目には良く目立つがシカの目にはそうでもないので、事故防止に適しているらしい。

弓矢によるディア・ハンティングは猟銃解禁期間の前後に計2カ月半あるが、ハンターたちの関心の的は何といっても猟銃による狩りが許される11月15日〜30日の16日間。ミシガン中部以北では、毎年11月15日のディア・ハンティング解禁日を休校にする学校も多い。公立校に通う我が子たちも毎年シカ狩り解禁日は休校。何でも欠席者が多くて授業にならず公的に休校にすることになったという。それほどシカ狩りは人気が高い。狩猟は父子の絆を深める年間行事、という家族もよくあると聞く。息子たちのクラスメートのなかにも父親に連れられてシカ狩りにでかけ、見事獲物を射止めた友だちもけっこういるという。

狩猟許可料はミシガン州の住人なら大人14ドル、小人7ドルと手ごろだが、ディア・ハンティングによる経済効果はかなりで、今年の予想では、75万人のハンターが、宿泊、外食、交通、狩猟道具やキャンプ用品等に消費する額が5億ドルという。

健全な生態系の維持にシカ狩りは必須?

娯楽で動物を殺すという発想は、動物愛護心の強い人には残酷すぎるかもしれないが、シカ狩りを禁止すれば、増殖し続けるシカに植物の芽は食べ尽くされ、トウモロコシ畑は荒され……といった被害が増大するばかりでなく、高速道路を横切るシカが原因の交通事故も間違いなく増すことになる。

現実に、シカを避けようとして引き起こした事故で娘を失った友人もいるし、シカをはねてしまった車に同乗していたこともある。残酷かもしれないが、このディア・ハンティングはシカの増殖を抑え生態系のバランスを保つ役割も果たしているらしい。

この時期のニュースと言えばハンターの事故。見通しをよくするために登った木から落ちて腰を折ったり、流れ弾に当たって命を落としたり……といった不運な記事を毎年耳にする。ことにハンターがほかのハンターの銃弾に倒れるという事故は、同一グループ内で発生することが多いという。なかには事故に見せかけた犯罪ではないかという疑わしいケースもあるらしい。 陰で恨みを買っているかもしれないような知人に狩猟に誘われたら、もしかしたらそれは……。



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