【五大湖のふところミシガンで暮らす】
鳩山 幹雄  

6週ごとに郵便で送られる成績表
6週ごとに郵便で送られる成績表

授業中も生徒はこのとおりリラックス
授業中も生徒はこのとおりリラックス



第30回 かなり優雅な高校生活…無受験+夏休み3カ月


日本にいたら我が家はダブル受験

「○○さんちの子供はもう高校受験で、毎日ピリピリしてるんだって」 同じ年頃の子供をもつ日本の友人から届いたEメールを読んだ妻が、まるで他人事のように笑って言った。

小学校入学から高校卒業まで12年というのは日本と共通だが、小・中・高校に通う年数は地域社会によってまちまちなので、中学1年、中学2年……というかわりに、こちらでは通常7年生、8年生……と呼ぶ。息子たちの通う学区では、一昨年から小学校が1〜4年と、5〜6年に2分されたため、昨秋5年生になった末っ子は、高学年用の小学校に移った。7〜8年生が中学に通い、9〜12年生が高校。当然受験は不要で、普通の成績を維持していれば誰でも進学できる。12年生の長女、10年生の長男に、9年生になった次男が加わり、現在子供3人が、市内唯一の公立高校に通っている。

学校はすべて週休2日で、授業があるのは前・後期それぞれ18週の計36週。冬休みは2週間、春休みが1週間、そして夏休みが約3カ月。どの休みも登校日はゼロ。日本の学生に比べたら、学校に拘束される時間ははるかに短い。言葉の壁をほぼ克服した子供たちにとって、現在の生活は日本の友だちと比較するなら、そうとう優雅。

もし今日本に戻れば長女は高校3年生で大学受験を目前にひかえることになる。長男と次男は中途転入の事情でこちらの学年は日本よりも半年進んでいるため、日本では長男は中学3年生で高校受験をひかえることになり、春にはダブル受験。親として眉間にしわを寄せる毎日が続いていたかも。そう考えると、優雅なのは子供たちよりも、余計な気を遣わずにいられる親のほうかもしれない。

次男の成績がオールAに!

「オレのGPAが4になったよ」と第2期の成績表を手にした次男が自慢げに言うので、「良かったな、感謝しろよ、遺伝だからな」と返事すると、次男は「ハッハ」と鼻で笑った。

GPAはGrade Point Averageの略で全教科の成績の平均値。成績はABCDFの5段階評価で、Aが4、A=3.8、B+=3.5、B=3、B=2.8、C+=2.5、C=2……F=0といった具合に数値化され、その平均値が毎期算出されて郵送で通達される。つまりGPA=4ということは全教科A。

中学と高校は18週がさらに6週ずつに3分割され、計6回成績表を受け取り、毎回その期間のGPAと累計GPAとの双方が通知される。次男は前回も3.967と十分立派な成績だったが、今回のパーフェクトな結果に普段の自信過剰が加わり自己満足の極致。

過去8回成績表を受け取ったがGPA=4というパーフェクトスコアは1度もない長女と長男は素直に賞賛する気にはなれないらしく、「まだ始まったばかりで簡単だからだよ。そのうち下がるに決まっている」と、冷たい態度。歳が近い兄弟は、何かと張り合うというが、まさにその典型。

ちなみに10年生の長男のGPAも前回の3.850から3.933へと向上。下がったのは高校生活もあと半年ちょっとという長女で、第1期のGPAは3.883と立派だったのに、第2期は2教科がBで3.717と急降下。毎日ボーイフレンドと何時間もふらついているツケが回ったようだ。それでも今までの貯えがあるので、累計GPAは3.900。だがこれも、サモアである程度英語をマスターしたからこそ、それほど苦労せずにいられるのだろう。もし日本から直接ミシガンに越していたら、進級すらもできていないかも。

それにしても3人とも大した努力をしている様子もないことを思うと、日本の高校生に比べたら学習量的にはかなり劣るに違いない。だが、その分趣味に活かす時間も確保でき、ストレスもたまらず「キレル」心配もしなくてよいことを思えば、親としては現在の暮らしにもう少し感謝するべきかもしれない。



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