【五大湖のふところミシガンで暮らす】
鳩山 幹雄  

行き付けのレンタルビデオショップ
行き付けのレンタルビデオショップ
ビデオショップの幼児コーナーには遊具も揃っている
ビデオショップの幼児コーナー
には遊具も揃っている
最新作は同じ映画が数十本並ぶ
最新作は同じ映画が数十本並ぶ



第32回 真冬の週末は家族でビデオ鑑賞


好みのジャンルはバラバラ

本格的冬に突入して以来、日暮れは早いし気温は連日マイナスという天候が続くようになり、屋外で過ごす時間がめっきり減った。以来、週末はたいてい家族揃って映画鑑賞。といっても映画館の巨大スクリーンではなくて居間の20インチテレビでレンタルビデオやDVD鑑賞。

何といっても魅力は安価なレンタル料。大半はビデオもDVDも1本1ドルで、ちょっと古いと2本で1ドル、最新作でも1本3ドル。そのうえ「1本借りたらもう1本無料」というクーポンも時折折り込み広告についてくる。幼児向けビデオはなんと無料。日本でも、最新作でなければビデオレンタル料が1本100円というショップもあるようだが、レンタルビデオが巷に現われ始めた20年ほど前、年会費1万円、レンタル料1本2千円という、当時の物価を考慮するなら信じられないほど高額な料金を払って自宅で映画を楽しんだ。今思えば愚かな無駄遣いをしたものだ。

わが家の場合、映画は一家6人全員に共通の趣味と言えるが、好みのジャンルとなると必ずしも一致しない。息子たちの好みは何といってもジャッキー・チェン、ジェット・リー系列のカンフーアクション映画やジム・キャリー、エディ・マーフィーなどが主演するコメディ、それに「エイリアン」「ゴジラ」系列のSFモノ。長女の趣味はファンタジーやアニメ。 「ハリーポッター」は、妻を除いて全員に好評。先日娘が友人からDVDを借り、子供たちは何度も見返した。末っ子などは、見事な英国アクセントでハリーの台詞を空で言えてしまうほど。ちなみに妻の趣味というと「ひまわり」のようなホロリと涙する純愛映画。

これだけバラバラだと全員一致の映画を選択することはほとんど不可能。だからレンタルビデオショップに出かけると、たかが3本選ぶのに1時間もかかってしまうことも珍しくない。とくに妻が選ぼうとするような映画は、十中八九息子たちに「つまらない」といって却下され、結局多数決で子供たちが微笑む結果に。子供たちのリクエストの結果選んだ最近の映画は「スパイ・キッズ」「クロック・ストッパー」「スパイダーマン」など。

親の好みを子供に強要

末っ子はまだ10歳だが、ほかの3人の子供はそろそろ大人の映画を理解できる年頃なので、親子共通の話題作りになるかと思い、ときには親の趣味で映画を選ぶことにした。そんな親の偏見で選んだのが1972年作品の「探偵スルース」(原題はSleuth)。以前からもう1度見たいと思っていたが、今まで見つけることができなかった。インターネットで調べたところ、ビデオが発売になったのが1998年、DVDは2002年とのこと。さっそくいつものビデオショップで尋ねると「他店から取り寄せ可能です」。

子供たちはあまり気乗りがしないようだったが、「考えてもみろ。30年も前の映画が今になってわざわざビデオやDVDで復活するという事実からしても、いかに名作かがわかるだろう」と懸命に説得し、なんとかテレビの前に座らせた。 この映画は登場人物が2人と、ちょっと変わっていて、その二転三転するストーリー展開が魅力なのだが、残念ながら家族の評判は今ひとつ。イギリス訛りの英語が聞き取りにくいことがネックでストーリーについていけなかったようだ。

「いいものはいつになってもいいんだ」と、それでも懲りずに親の趣味を強要。翌週の「父親推薦映画」は1975年のアカデミー受賞作品の『カッコーの巣の上で(原題はOne Flew Over the Cuckoo's Nest)』。舞台は1963年のオレゴン州。検査のために送られた精神病棟で、ジャック・ニコルソン演じる主人公マクマーフィーが入院患者と繰り広げるハチャメチャだけどもみんなの心をつかむ言動に、家族で笑った。

この映画にこめられた数々のメッセージを、果たしてどれだけ子供たちが受けとめたかは疑問だが、「自分の気に入った映画を子供たちと分かち合いたい」という親の自己満足だけはなんとか果たされた。



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