【五大湖のふところミシガンで暮らす】
鳩山 幹雄  

プロのカメラマンが撮った写真
プロのカメラマンが撮った写真
パーティー会場に向かう前に、庭で記念撮影
パーティー会場に向かう前に、
庭で記念撮影
お気に入りの友だちとツーショット
お気に入りの友だちとツーショット



第40回 ハイスクール・プロムは女子高生最大のイベント


1日お姫様

卒業式が迫るにつれ、高3の長女が若干あせり始めた。卒業式は6月だが、その3週間ほど前にプロムと呼ばれる高校卒業パーティが催される。このプロムに着飾って出席するのが、ここの女子高生にとっての最大の関心事のひとつといったところなのだが、アメリカでパーティと言えばカップルが原則。ひとりで出席するわけにはいかない。目下適当な相手がいない長女は、果たして誰とこのプロムに出席するかで毎日頭を悩ませていた。

ところが、プロムがあと2週間と間近に迫った頃、突然その悩みが解消した。友だち思いな友人がプロムの相手を調達してくれたらしい。その相手は、一学年上で昨年同じハイスクールを卒業し、現在は地元の大学に通っているらしいが、カップルのどちらかが今年卒業する本人であれば、その相手はすでに卒業していても、または1、2学年下でも構わないという。 好き嫌いの激しい長女だが、なんとか即席カップルの相手になりうると判断したらしく、一難は突破した。が、プロムの準備はまだ続く。

なにせこのプロムは、日本の女性が成人式に思いきり着飾るのに似ていて、多くがこの数時間のパーティのために何百ドルもするロングドレスを新調する。つまりプロムに出席すると決めた女生徒は、何カ月も前からその準備を始めているのだ。幸い娘は、ちょうどサイズの合うすてきなドレスを貸してくれるという友人をみつけ、この問題も解消された。それでも、キラキラの髪飾りやレースの手袋、普段まず履くことのないハイヒール……と、プロム前の1週間は、毎日ショッピングに忙しかった。

プロム当日の土曜日の午後1時頃、「2時間くらいしたら、みんなドレス来て、一緒にそれぞれの家を回って写真を撮るんだって。だから、3時か3時半くらいにみんなで立ち寄るから」そう言い残すと、娘は迎えに来た友人とともに衣装一式を抱えて準備に出かけた。

予定通り午後3時半頃、3組のカップルが2台の車でやってきた。長女の白いドレスもなかなかすてきなのだが、裾のフワリと広がったフランス人形のようなドレスに身を包んだ友人2人はまさにお姫様。エスコートする男性3人は全員タキシード。たいていはレンタルらしいが、この1日のために100〜200ドルはかかるらしい。加えてプロム参加費用が1人35ドルかかる。それだけ費やしてまでも即席カップルになってくれるという相手が見つかった娘は運がいい。天気が好かったので、やっと芝の蒼さの戻った庭で記念写真を数枚撮影すると、3組は次の友人宅へと消えた。

深夜まで続くダンス・パーティ

このプロムの内容が、またなんともアメリカ的。まずは夕刻5時半からはプロのカメラマンによる記念撮影。7時半に始まるダンス・ディナー・パーティは、なんと深夜12時まで続く。まるでシンデレラだ。そして深夜12時になると、ドレスを脱ぎ捨て、2次会のボーリング大会。そして深夜2時から4時が朝食。これが高校の卒業パーティなのだ。 「毎年羽目をはずして新聞沙汰になる高校生もいるから気をつけるように」と、友人から忠告された妻は、「新聞に載るようなことしないようにね」と出掛けぎわに娘に釘を刺した。

好奇心旺盛な妻は、プロムの様子をひと目見学したい様子だったが、「お願いだから来ないで」と娘に懇願されたので、なんとか思いとどまった。18歳にもなって、親に覗きに来られるのは確かにできれば避けたいに違いない。

プロムの様子が知りたくて、娘の帰りが待ち遠しい妻とともにかなり遅くまで起きていたが、どうせ朝帰りなのだからと決めつけ、午前2時半頃床に就いた。 翌朝目を覚ますと、妻と娘の大きな話し声が耳に入った。昨日の模様を根掘り葉掘り尋ねる母親に娘が身振り手振りで説明しているらしい。この2年間に親しかった2人の元ボーイフレンドは、それぞれ新しいガールフレンドを連れて参加していたようだ。

「楽しかったよ。学校で一番カッコいい男子とスローダンスも踊ったしね。でも、プロム自体は思ったほどでもなかったかな。……3時半くらいに戻ったんだけど、どうせみんな寝てたんなら、朝になってから帰ってもわかんなかったね。もっと遊んでくるんだった」 妻の質問に答える娘の明るい声が続いた。



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