【五大湖のふところミシガンで暮らす】
鳩山 幹雄  

バケツで手洗いが重要な日課だったサモア時代の妻
バケツで手洗いが重要な
日課だったサモア時代の妻
洗濯は1杯1ドル、乾燥は50セント。これだけの洗濯物だと洗濯に3杯、乾燥は2杯、占めて4ドルかかる
洗濯は1杯1ドル、乾燥は
50セント。これだけの洗濯物
だと洗濯に3杯、乾燥は2杯
占めて4ドルかかる
山盛りの洗濯物をスケートボードにのせてコインランドリーへ運ぶ長男と次男
山盛りの洗濯物をスケートボード
にのせてコインランドリーへ運ぶ
長男と次男



第9回 かなり変化した、妻の日課


一番の相違は洗濯

わが家の場合、どこに暮らしても毎朝一番に起きるのは、やはり母親である妻。起床はサモアに暮らした頃とほぼ同じ6時半。4人の子供を順に起こし、朝食と弁当を用意する。長男、次男、長女の3人を、スクールバスに間に合うよう7時ちょうどに送り出し、末っ子を8時頃に小学校に届ける。末っ子も最初の頃はスクールバスを利用していたが、車で5分とかからない距離を、ぐるぐると大回りするバスだと30分もかかってしまうので、妻が送るようになった。

サモア暮らしとの決定的相違は洗濯。サモアでは午前中の日課に洗濯があった。毎朝一家6人の洗濯物をバケツで手洗い、手しぼりしてテラスに干した。夏物ばかりだったので想像ほど辛い作業ではなかったが、それでもときにはシーツやバスタオルなども洗わなければならず、毎日欠かさず50分ほどは洗濯に費やした。ミシガンに暮らすようになって妻のこの日課が消えた。

現在わが家には洗濯機がない。設置も不可。代わりに敷地内にコインランドリーがある。週末になると、山ほどの洗濯物を子供たちの手を借りてコインランドリーへと運び、後はすべて機械任せ。3台の大型洗濯機を同時に使って約30分。そして乾燥機に入れてさらに1時間。洗濯機や乾燥機が動いているあいだは、帰宅してコーヒータイム。乾燥の終了した洗濯物は再び子供たちに運ばせる。生活は変わっても「子供が家事の一端を担う」というサモア時代の習慣は現在も健在。

読書、おしゃべり、昼寝からインターネット三昧の日々に

妻の余暇の過ごし方も一変した。サモアでは、いつも暇な主婦仲間とのおしゃべり、読書、それに昼寝というのが3大余暇だった。もちろん常夏の気候では、健康維持のためにも昼寝は不可欠。誰もが当然の権利のごとく昼寝を重視する。

ところがミシガンに越して以来、妻はあまり昼寝をしなくなった。近所の主婦と無駄話に明け暮れることもあまりなくなった。なにせ多忙な暮らしを維持することを美徳とするアメリカ文化。暇を持て余していたりすればろくでなし扱いされ兼ねないので、暇そうな主婦を見つけるのは難しい。 そんな価値観を持ち合わせる人々に誤って「昼寝が趣味」などと本音を漏らそうものなら軽蔑の眼差しを向けられるのが落ち。

昼寝や井戸端会議に費やす時間が縮小した妻はその分コンピュータと向かい合う時間が増した。サモアでは、わが家のインターネット契約は月々20時間、それも利用可能時間帯は午後5時から翌朝7時という制限付きだったため、インターネット接続は夕方以降でせいぜい日に1時間弱程度だった。 ところが、現在の住まいはインターネット常時接続で毎日24時間使い放題なので、朝夕を選ばずあちこちのホームページを訪問。インターネットで新聞を読み、Eメールで日本の家族や友人と会話し……と、毎日コンピュータを駆使している。

サモアの暮らしとはまるで180度転換の日々。環境の違いがまるで価値観まで変えてしまったようでもあるが、「郷に入っては郷に従え」をモットーとしているだけ、というのはちょっと無理があるだろうか。



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