2 ゴミ箱行きのニンジンを救った娘


Michigan summer

サマータイムの間は夜の10時近くまで明るい。
サモアでは床についていた時刻でも、
時を惜しむ様にバスケットをして遊ぶ子供たち
南の小さなトロピカルアイランド、サモアから北の大国アメリカへと引っ越してからの子供 たちの日々の過ごし方はいろいろな面において激変した。

 モノに振りまわされず、シンプルな暮らしが体験したくて過ごした南国ライフと、とことん文明の利器に頼り、モノを消費して暮らしを便利にするアメリカンライフとは、ある意味で対極の暮らしといえるかもしれない。

 ついこの間までココナツの木々に囲まれた南国で、特に道具も必要とせずマンゴやグァバの木によじ登り、娯楽と言えば海で戯れることしかない暮らしをしていた子供たちが、今や広々とまっすぐな道をローラーブレードやスケボーでスイスイすべって遊ぶ姿を見ていると早くも「アメリカナイズ」の兆しを感じる。

そして娘は南の島ではあまり「おしゃれ」にこだわる機会も必要もなかったのが、突然火がついたように自分を飾ることに燃え出した。目に見えて子供たちの暮らしぶりが変わるにつれ、環境が与える子供たちへの影響力を強く感じてしまう。

アメリカで一年を過ごしてみていちばん気になることは、消費に対して無頓着になることだ。ある日娘が学校からニンジンを持って帰ってきた。

 「こっちの友達ってほんとに簡単に食べ物を捨てちゃうんだよね。もったいない」

 聞いてみると、お弁当に持ってきた未開封のミニキャロットを、食べないからと言って友達は簡単にゴミ箱に捨ててしまうと言う。小さな頃から「世界には飢餓に苦しんでいる子供たちもたくさんいることを忘れないで」と教えてきたからか、捨てるのを見かねて、娘はニンジンをもらって帰ってきたようだ。

 日本人の多くは「もったいない」という言葉、そしてその意味を知っているだろう。こちらの子供たちに、私達日本人が理解する「もったいない」の意味が通じるかどうかは疑問だ。消費と無駄は違う。もったいないとケチも違う。そういった微妙なニュアンスを我が子にはしっかり理解してもらいたい。

 親としては、サモアでの貴重な体験や日本人としての価値観などは、どこに暮らしても忘れず、アメリカの良い部分を吸収して成長して行ってほしいと願っている。でも、公立の現地校に通う我が子たちがこれから先、良くも悪くもある程度アメリカに染まっていくことは避けられないのかもしれない。

(shes netに連載されたものを転載しております)


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